ぱんふ創りアレコレ-8

決定版!会社案内の作り方【事前準備〜制作会社選び】

新規でつくる、リニューアルする、いずれでも、
企業の公式メディアたる『会社案内』づくりの担当になった、
社内で初めてつくる。
やはり会社の品格を示す会社案内づくりは、失敗を許されない。
担当者のプレッシャーも一入(ひとしお)でしょう。
そんな担当になったあなたに、
会社案内を延べ500作品以上作ってきたプロが、
その極意を伝授します!

1. はじめに

この記事では、予めお伝えしておくことが何点かあります。

  1. 簡易的につくる会社案内の場合、この記事は役に立てません。
  2. 納期は最低3ヶ月を予定できること。短納期を希望する場合も参考になりません。
  3. 本格的に、念入りに、じっくり、しかも適正納期で会社案内を作りたい企業向けです。
  4. さらに適正価格を前提とするため、低価格を希望する場合も、やはり役に立ちません。
  5. 制作会社への委託発注が前提のお役立ち情報であり、内製には不向きの記事内容です。
  6. 当記事は、かなりボリュームのある本格記事のため、例えば上記「MENU」を参照の上、気になる項目の拾い読みでも有効です。

まずこれらをクリアできれば、成功する会社案内づくりの第一歩として、
当記事は大変役に立ちます。
とは言え、高価格を標榜し、バブリーな会社案内を目指そう、
というのではありませんので、そこは誤解なきよう。

社内での会社案内づくりチェックリストとして、
全てを熟読されるのが最もいいのですが、
上記MENU(目次)の中から、自社で重要と思われる項目だけとか、
“価格相場”や“仕上りスケジュール”、“業者選びのコツ”など、
ナナメ読みでも、とても参考になります。

会社案内初めてでも、経験者でも、
「会社案内作成マニュアル」としてご活用ください。

2. まずプロジェクトチームの結成!

会社案内を新規で作る場合でも、リニューアルする場合でも、
担当部門長から「君が担当してくれたまえ。」とか、
時に社長直々、「君が中心になってやってもらいたい。」となれば、
下命を受けた社員は、それはもう大きなプレッシャーでしょう。

でもNo Problem!
部門横断的プロジェクトチーム(PT)を社内で呼びかけましょう。
なぜなら、企業の公式メディアの会社案内です。
企業のスポークスマンを紙媒体の冊子で広くステークホルダーに配布するもの。
少なくとも一部門内で完結させる作り方ではなく、
会社案内の活用目的や用途にもより、複数部門の選任者や有志で構成しましょう。

例えば、総務部が制作主催になる場合、
営業部門、広報部門、経営企画室、生産・サービス部門、開発部門等々。
また採用目的も含める場合、人事・採用部門も入るでしょう。
さらにCIやコーポレートカラー、ブランド基準の社内コード遵守など、
その担当部署が知財管理部門や法務であれば、PT参加ではなくとも、
側面的な御意見番としての何らかの関与は求めておきましょう。

このような全てのセクションを網羅すべきかどうかは、
会社案内の制作目的により、どの部門が関わるべきか、
最適なPTのメンバー構成を行えれば百人力です!

部門が少ない中小規模の企業の場合も、適任者を複数人選定し、
同様の考え方で臨むとよいでしょう。

ただこのPTで1点心得ておきたいのは、
皆本業の業務を遂行しながら、兼務のPT活動となるため、
なるべく効率よく、メンバーの負荷にならないよう配慮が重要です。

3. キーパーソン選定がスムーズな運営の“鍵”

そもそもPT結成が先か、キーパーソン選定が先か、
これはケースバイケースと思いますが、
いずれにしてもPTの推進力となるキーパーソンは必須です。
それは会社案内づくりの見識や経験があるないは、もちろんあれば千人力ですが、
それらが無くてもNo Problem!
それに代わってこのブログ記事が千人力になりましょう!

そのキーパーソンですが、
やはりその経験よりも、チームリーダーとしての統率力、
バランスのいい意見集約力、そして会社の事業全域に造詣があり、
企業の価値やブランドをきちんと理解している。
またはそれに準じた人が適任です。

またこの会社案内づくりが予算計上案件なのか否かも大きく、
決裁時点での経営層への発言力がある人材がリーダー格になると、
よりスムーズで好都合です。

この辺を参考にされて人選するとよいでしょう。

4. この時点で経験者や前任者に聞いてみよう!

さてPTの本格始動前のこの時点で、
現状の会社案内作成に関わった前任者や、
社内印刷物づくりの経験者に話を聞いてみましょう。
経験者や前任者がPTに加わっていれば好都合ですが、
社内で突き止めて、過去の会社案内づくりについての情報やエピソードを入手しましょう。

特に苦労話や失敗談は、PTの重要チェック事項になるし、
予備知識として貴重なネタになります。

5. 役割分担が事前準備をスピーディにする

これでPT結成とキーマン選出がかない、いよいよ会社案内づくりPTのキックオフ!
早速役割を分担しましょう。
大きくはおおよそ以下の要件が対象となります。

  • 前任者・経験者への聞き取り
  • 部門要求・課題のヒアリングと集約
  • 納期を決める
  • 制作費相場の調査
  • 概算の予算計上と社内調整
  • サンプル収集
  • ラフな台割(だいわり)作成
  • RFPの作成
  • 制作業者の候補物色
  • CIマニュアル・ブランドマニュアルの準備

これらを極論すれば、役割を振ってそれぞれメンバーが同時進行することで、
効率よく、しかも短期間でそれぞれの事前準備タスクを消化できます。
もちろん負荷が集中しないよう、
兼務や踏み込み程度は事前にキーパーソンが指示しておきます。

以下これらの順に沿って要点を解説していきます。

6. 意外とかかる?全体スケジュール

前項と共にPT始動時点で、強く認識しておく必要がある事として、
仕上りまでの納期、つまり全体のスケジュールがあります。

8ページ〜24ページ程度の全体スケジュール

これらを経て、ようやく納品となります。これを合計してみると…

  • PT結成〜業者決定|2ヶ月〜最小1ヶ月
  • 企画・制作期間|4ヶ月〜最小2.5ヶ月
  • 印刷〜納品期間|0.5ヶ月

これを最長・最短で表にまとめました。

会社案内制作期間|最長・最短納期

ここまでかかるんです!
企業サイド・PTの準備期間〜業者選定・決定期間まで含めた総期間になると、さらにご覧の通り!
意外だ!と思われる方もいるでしょう。
時々なんでそんなにかかるんだ!と強い疑問が寄せられますが、
これで瞭然!おわかりいただけると思います。
業者決定は企業側が複数社を選定、
そこから“オーディション”をする時間がかかるだけでなく、
プロが選ぶのではないため、必然的に企業は慎重にならざるを得ません。

7. 制作費の相場感を持とう

この制作費は会社案内づくりとして、企業の大きな関心事の一つです。
果たして自社が目指す、
またPTが希望する会社案内レベルの価格相場はいかほどか?
以下、おおよその相場感をご参照ください。

会社案内制作費の市場相場

いかがですか?
表の最上部に記載している仕様での価格ガイドラインですので、
ページ数が増えたり、用紙や加工にこだわりを持ったり、
複数地方の取材・撮影があったり、CGデザインを使用したり…

ただこの仕様での市場相場感は、大きく外れたものでは無いはずです。

またこのブログの目指す価格帯は、
中上価格帯レベル以上のクオリティを目指す設定です。
お気付きとは思いますが、念のため。

8. クリエイティブの目を肥やす

会社案内のクリエイティブ品質は企業ブランドを決定づける重要なファクター。
それだけにデザインセンスの良さは、企業の品格というレッテルになります。
また企業の本質を巧みに顕在化するコピー、巧妙な言い回しのライティング、
もちろん撮影ワザを極めたビビッドな写真画像。

いずれも会社案内クリエイティブの根幹であり、
これによって顧客、エンドユーザー、求職者、その他ステークホルダーは、
その企業の格付けをしてしまう。そんなことはないだろう!
と言っても、やはり顕在・潜在でそう見られてしまうのです。それが人情!

さはさりながら、
一般でそのクオリティを見極めるのは、なかなか難度が高い。
従って、やはり候補にする業者の実績・作品を見て、
PT皆さんで判断するしかないわけで、
まずは皆さんの直感や美的センスを優先させるべきでしょう。
候補にする当該業者のWebサイトの閲覧、
また会社案内現物を手にとっての判断はマストです!
ここはデザイン力がある、と思しき候補業者には、
初期の交渉時に持参させるといいでしょう。

いずれにしても、
PTが目指すデザイン性はメンバー共有でしっかり持つべきです。

9. 社内各部門の要求・課題事項をとりまとめる

ここからが会社案内づくりPTの本格的な始動となります。
まず、各部門の意見集約をしましょう。
ページ数やスペックが決まらないこの時点ですので、
まずはニュートラルに各部門の要求や課題をヒアリングします。
もちろん全ての要求が通るわけでは無く、必ず調整は必要ですが、
この時点では、重要な要求事項や要件の漏れが無いようにしておきたいものです。
さらにこの時点では、単純な主観的、情緒的課題も止むを得ないと考えます。
例えば、

  • 営業部員が使いづらいと不満がある
  • そもそも使ってなく、多数在庫がある
  • デザインが古臭くカッコ悪い
  • 何の特徴も無く淡白な内容が、会社の存在感を示さない
  • 就活生・求職者の評判が良くない

その他様々ですが、少なくともこのような課題状況でも、
そのインサイト、つまりそこに潜む本質は捉えておくべきでしょう。

10. 目的・狙いやコンセプトの方向付け

意見集約ができたら、ここでPTメンバー全員参加の検討会がいいでしょう。
ここでの検討事項は、大掴み、会社案内をどのような目的や狙いとするのか?

例えば、営業部門から強い要望で、商談に効力を発揮させたい。
或いは、人事・採用部門から社員採用の企業理解を促進させることを狙いたい。
また総務部門から株主・投資家への情報発信力を高めたい。
特に狙いは特定させず、公式媒体として多目的に活用できる内容にしたい。
等々、その方向性や制作コンセプトをこの時点で一定レベルで持ちましょう。

とは言え、その企業の集大成、化身とも言える会社案内ですので、
それぞれの目的情報のウエイト・配分の違いだけで、
企業の広範囲な情報発信は避けることはできないでしょう。

完全に専門化するとなれば、最早その時点で会社案内ではなくなり、
営業特化にする場合、総合カタログや製品パンフレット、
採用特化であれば入社案内、採用パンフレットとなるからです。

11. CIやミッション・ビジョンは会社案内の魂

前項目に関連した要件として、会社案内の目的や狙い、制作コンセプトの根底には、
必ずCI【コーポレート・アイデンティティ】が宿るものです。
むしろ企業アイデンティティが宿っていない会社案内は、
企業の公式メディアとは言えません。
また、自社の目指す理想や社会貢献について、
このCIを行動レベルで具体化し、可視化した「ミッション・ビジョン」もしかり。

ここでこれらの詳しい言及は避けますが、
CI、ミッション・ビジョンは会社案内の基盤に息づくもので、
そのスピリットをビルトインしたいものです。

ただこの会社案内の中で、必ずしもストレートにCIを訴え、ミッション・ビジョンを語る、
というものではありません。
それはむしろ深い企業理解から、どう会社案内で表現するか?
まさにそこは制作会社の腕の見せ所と言えるでしょう。

このCIやミッション・ビジョンについては弊社の「パンフレット専科」で、
わかりやすく説明していますので、合わせてご覧ください。
以下のバナーからどうぞ。


12. サンプリングで視野を広げよう

何と言っても同業他社の会社案内は必須です。
なるべく多数収集しましょう。
また同程度、同規模の企業の会社案内も参考になります。
さらに特定なしで幅広い企業のサンプルを収集することも大事でしょう。
コーポレートサイトのPDFダウンロードで公開していることもありますので、
これも活用しながらも、やはり現物を入手することはとても重要です。
それは会社案内という媒体が紙媒体であり、
用紙、サイズ、形状、加工、印刷方法、ページ数….等々。
アナログの良さがギッシリ詰まっているからです。

用紙はよく流通している用紙でも数百種類、
その厚さ、風合い、マットかグロスか、手触りまで千差万別。
加工もポケット加工、型抜き、型押し、金箔押し、ニス加工等々。
とにかくここにデジタルでは語れない、会社案内の存在価値があるのです。

ぜひたくさんサンプリングして、自社に適合するものがあれば、
すかさず取り入れてください。
もちろんデザイン性や情報構成、台割方法なども参考になるものもあるでしょうし、
クリエイティブのあり方の参考にもなります。

サンプリング会社案内
サンプリングされた会社案内。ちなみに弊社作品ラインナップのイメージ。

13. 想定ページ数の割り出しとラフな台割作成

これまでの収集した意見や情報を元に、この時点での想定ページ数を検討し、
可能であればなんとなくの台割(だいわり)を作ってみてください。
ただここは飛ばしてもいいフェーズで、
実際にRFPの提示で、業者に提案させることで十分いいと思いますが、
想定ページ数は後の予算計上や決裁に大きく関わることなので、
一定程度この時点でのページ数は必要かもしれません。

しかしながらこれも、この時点ではA4規格サイズで何ページ、
というレベルでいいと思います。もちろん予算がらみですので、
精緻なレベルでページ数に落とし込めれば、それは好都合でしょうが、
弊社の経験上、PTの要件を聞き出すと、全く異なるスペックでの提案になり、
それが結果的に強い共感を得て、正式採用ということは、
特に珍しいことではありませんので、ここはあくまでも可能な限りで結構でしょう。

因みに台割とは?
会社案内の想定ページ数の中で、どの情報をどのページに、どれほどの割合で配分するか、シミュレーションをするものです。そこにデザイン性やコピー・ライティングの表現方法は全く不要です。
つまり集約した社内意見がこの時点での集大成であり、それらを実際の誌面に落とし込んでシミュレーションして制作業者へ提示することにより、自社やPTの主張をきちんと示す大事な機会になります。実際にやってみようと思う場合は、手書きで振り分けてみましょう。色々なことがわかってきますよ。
ページ数は4の倍数?
A4規格サイズの会社案内では、一般的にA3規格サイズの用紙を真ん中で二つ折りし、その中心を2針で綴じ込むため、これを中綴じといいます。この規格で30ページ以内ですと、この中綴じが標準の綴じ方法になりますので、会社案内であれば中綴じとなるでしょう。
このようなことから、A3の二つ折りのA4で換算すると、オモテ《A4×2面》=>《オモテ+ウラ》で、自ずと両面で4ページとなります。つまり4の倍数ページで、8、12、16、20、24ページ…となります。
実はこの例外として、中綴じの一部のページを観音折りで折込むと、それが追加プラス2ページで、上記で言うと、10、14、18、22、26ページ…となります。
もう一つは、50ページ以上の多ページとなれば、“無線綴じ”という綴じ方法となり、必ずしも4の倍数にはなりません。参考までに。
中綴じ+観音折り
「中綴じ+観音折り」の弊社作品会社案内【雪印メグミルク様|全24ページ構成】です。写真右手前の見開きの左2面・右2面のセンターが中綴じ箇所。左「History」箇所、右「Pioneer」箇所が内側に折り込まれてA4サイズにきれいに収まる。この場合の左右4面見開きを「両観音折り加工」といい、この箇所だけで4ページとなり、全24ページの構成をなします。

14. 候補の制作業者をリストアップして審査

会社案内づくりを成功するか否かのキャスティングボートを握るのが業者選定です。
様々な要求の中で、理想に近いレベルでそれを実現できる業者の見極めは、
大変難易度の高いものです。
特にこの会社案内仕上がりの失敗は、社内の不評、不満足につながり、
PTの責任問題にも発展しかねない….
イヤハヤ、PTもなかなかの重責ですねェ〜….

このようなことからも、制作会社、業者の選定は私的主観を排し、
冷静に慧眼をもって臨みましょう。
その業者物色の方法から、候補を選定する基準までを以降で説明します。

01. 候補業者のリストアップ方法

【既存業者・現状の取引業者】
前回制作を委託した業者は候補になる。、企業理解が最もできているため、プライオリティは高い。ただ業者乗換えや現状に不満がある場合は避けた方がいい。
【Web検索】
Google、Yahooの検索により業者を検索。キーワードは「会社案内 業者」「会社案内 作成会社」等、色々試してみると異なるタイプの業者が表示されるので、幅広い候補を物色しやすくなる。
【紹介業者】
社内、PT、取引先、知合い等で、良い業者がいれば、紹介してもらう。
【企業広報年鑑・作品紹介誌】
広告業界・広告制作会社の年鑑を活用、有料で販売されている年鑑を購入、制作実績が制作会社別に掲載されており、その中に会社案内の作品も掲載されているのを参照。

02. 候補業者のピックアップ基準

初めての場合、既存業社にしておけば無難、と逃げてはダメです!
ここは自社やPTの価値観や要望に沿いそうな、
なるべく複数の候補業者をピックアップし検討しましょう。
そしてその中から3〜5社程度に絞り、実際にオファーをかけることで、
客観且つ幅広い視野での審査が可能となります。

その選定基準は、ザックリと以下の要件で評価してみましょう。
この表の記載事項は、事前リサーチのみならず、交渉時にも使えるレベルのものです。
ただ、おそらく一般では表の記載事項までの深い評価は困難と思いますので、
候補業者を見極めるための留意点として使ってもらえればいいでしょう。
必ず参考になるはずです。

法人格・組織体制 原則、制作専門のクリエーターを擁する法人組織が必須。プロデューサーを筆頭にアートディレクター、デザイナー、コピーライターのクリエーターが所属。カメラマンは印刷・加工以外のクリエイティブ領域は、社内一気通貫が制作力を最大化できる。カメラマンは得意領域の個性が強く、アウトソーシングが好都合なことが多い。
この候補業者に個人のフリーランスは避けた方が無難。
制作会社の属性 大まかに広告代理店、広告デザイン会社、印刷会社に別れるが、印刷会社以外、印刷や加工はほぼ100%外注。
広告代理店は総合的な企画・構成力に強みを発揮する傾向。デザインワーク等のクリエイティブは、外部契約のデザイン会社やフリーのクリエーターを束ねて制作にあたる。従って業者によっては品質が上下することもある。
広告デザイン会社はデザイン、コピーの実制作に強みを持つ。ただ営業職がいないことが多く、制作のディレクターが代行するため、総合的な提案力に欠けることが多い。
ちなみに弊社はこの両者の特徴を兼ね備える。
印刷会社は印刷のプロだが、クリエイティブは質を問えない。価格面は最も低価格ゾーンとなる。
実績・作品のデザイン性 前項のWeb検索でリサーチし、ピックアップした制作会社のサイト掲載実績・作品の品質をつぶさにチェックする。さらに会社案内は現物のチェックが重要で、本プレゼン前の事前交渉で現物持参を求めるとよい。実際に手にとって、ページを繰り、構成をチェックしたり、用紙・印刷・加工具合を視覚と手触りで体感することが重要。
コピー・ライティング制作 会社案内の場合、コピーライティングは企業の持つアイデンティティや企業ブランドが表現されていることがポイント。カタログやパンフレットではないため特に重要。また社内にライターがいないことで、「原稿支給」「リライト中心」となることがあるため、そこも確認事項となる。
撮影品質 積極的な撮影提案ができる業者がいい。仕上がりの撮影画像品質、さらにそのトリミングのセンスまで評価できると尚可。
納期・制作期間 納期は適正納期が重要。短納期で安受けするのは要注意。基本的に「6. 意外とかかる?全体スケジュール」で述べた通り、企業の公式メディアとしての品質、矜持を保つレベルではこの記事が示す通り。このスケジュール感を基準に業者を審査すべき。
価格面・制作費 これも前述「7. 制作費の相場感を持とう」で記載の通り、会社案内制作費の相場感から、社内計上予算、PTで決定した予算を踏まえ、業者Webサイトを参照し、制作費を事前リサーチする。
ただ検索市場では、低価格の業者が検索上位に位置することが多いことは念頭においておくべき。
デザイン案対応 PTの価値観で“先にデザインが見たい”、“そのデザイン提出業者の中から決めたい”。このマインドは理解できないわけでは無いが、ヒアリングや取材無しのデザイン案はほとんど意味をなさないことをPTは理解すべき。
また事前交渉時やプレゼン時にデザイン案を出したがる業者がいるが、これはかくの如く要注意。デザイン表現は会社案内を形成する一手段でしかなく、優先的目的では無いことを心得るべき。
制作進行管理 制作キックオフから納品まで一連の各タスクをスムーズに、且つスピーディにが前提。その上で特に業者に求めるべきことは、レスポンスがいいこと。進行過程で対応が後手に回ったり、返事が遅くなるなど、キャッチボールの返球の悪さはきちんと監視すべき。
その反面、企業・PTのレスの悪さ、滞りは発注者として全員で協調し、回避すべき。業者は常に複数案件を複数人のスタッフで回し、案件管理しているため、停滞は仕上り結果に悪い影響を及ぼすことがある。
用紙関連 Webとは異なり、用紙や加工の妙は、会社案内ならでは。採用するかしないかは別として、業者からはこだわりある提案を期待したいもの。用紙は企業のブランドイメージを表す、「モノ言わぬ会社案内のインフラ」と言えるもの。
印刷関連 印刷はプリプレスと印刷工程があり、前者では色校正が重要。普及してきた方法として「デジタルコンセンサス」があるが、簡易的にはいいが、用紙をこだわった場合は本紙・本機色校正をきちんと提案できる業者。
本工程の印刷は従来型の印刷に加え、低価格ネット印刷が普及してきたが、複数案件集合印刷のため、“色転び”や“版ずれ”のリスクが伴う。企業の公式メディアとしてはなるべく避けたい。
加工関連 加工は紙媒体の会社案内として、ポケット加工や折り・表面加工の機能性だけでなく、型抜き、型押し等のアクセントやアイキャッチにも効果的。
ほとんどの加工は印刷工程と一括作業となる。用紙表面へのニス加工やUV加工はインキ裏写り防止となり、用紙や使用インキなどによってリスク回避策なので、選定した用紙や印刷によっては業者のリスク提案が求められる。
ポケット加工、折り加工とともに、型押し、型抜き、箔押しなど、会社案内のエフェクトとして、提案内容によっては付加価値となる反面、やはり不良などのリスクは必ずつきまとうため、業者の実績と経験度が評価対象。
業務委託契約・NDA 業界的には契約締結という概念は希薄。正式発注が決定する時点で、業者からの契約申入れと契約の提示があれば問題ないが、無い場合は発注者サイドからの申入れが必要。

15. プレゼン参加業者を絞り込む

さて候補となる業者を複数社声かけ、
対面、オンラインでの提案・プレゼン機会をセッティングします。

前述の業者ピックアップ基準も参考に、多数の中から絞り込んで選定し、
2〜5社程度で行うのが最適でしょう。
それ以上の社数になっても、細分化されるだけで、優柔不断を誘うだけです。
しかもプレゼン時間の捻出で、PTメンバーの本業を圧迫することになり、
負担も大きくなるのは避けたいですよね。

時々、20社呼んでます。15社にプレゼンしてもらいます。
といったケースがありますが、これは全くナンセンスだと言えます。
これはきちんと事前準備をしてない証ですし、企業として主張を欠いており、
いくら初めてだから、素人ばかりなので、とは言えあまりにも主体性がありません。

声がけされた業者も、その数を聞いてトーンダウンするかもしれない、
プレゼンへの意欲も減退し、提案内容のレベルダウンを来すかもしれません。

かようなことを避ける意味でも、PTメンバーは強く意識すべきだし、
責任者の上席の方も看過されないように心がけたいものです。

16. こんな業者やケースには要注意!

少々ラジカルなテーマ項目ですが、
とりも直さず、求める品質の会社案内づくりを目指すPTでは、
以下の業者やケースにはご注意あれ!
これは全てでは無く、こういう業者の対応があったり、
実際に遭遇するケースもある、ということです。
ぜひ事前に精査することをオススメします。

低価格・短納期が自慢 Web検索でヒットする業者、また一般市場においても低価格訴求が圧倒的に多いのが実情、オモテ向きの体裁は整えても、会社案内の本質的品質や価値訴求はほとんど期待できない、デフレの象徴ビジネスがこの業界も蔓延
また案件の短納期対応も、簡易的、暫定的にならざるを得ず、不満足さから早晩の作り替えが発生
とにかくデザイン案を出したがる ヒアリングする以前にデザイン案を出したがる、しかも束見本といって、実際に全ページ(内容は仮想)を中綴じして、あたかもこれです!感で複数持参する
残念ながら妄想以外の何モノでもなく、中には使い回しデザインもあるため要注意
ヒアリングや取材が無い 顧客のオリエン丸呑みで、ヒアリングや取材が無い、あっても通り一遍の確認程度
原稿や写真の支給を要求 基本的にコピー制作・ライティングを請負うのは消極的、やってもリライト(原稿の一部直し)レベル
完全原稿を要求する 誤植での不良品発生で、刷り直し等の瑕疵担保責任を負いたくないため、全て原稿は完全テキストデータを要求
受注前の企画内容がそのまま本番 ヒアリング無しに主観の企画内容で受注した案件を、受注後も同じ企画・デザインそのままで本番制作を進める
台割りやワイヤーフレームの提示がない 客サイドで作った台割りイメージ通りで制作、そこに台割り提案やワイヤーフレームは無い
中にはそれら無しでいきなりデザイン案の提示がある
専任ディレクターがいない 顧客のアカウントを管理する営業職や、制作進行管理するプロデューサー・ディレクターがいない
中にはデザイナーが客対応して進行させていく場合もある
企画・構成は簡易的 企画構成と言えるレベルではない、またはそれ自体素通りして、いきなりデザイン提示をする
デザイン選択肢が無い ありがちな主観で作られたデザインが1案のみ提示される
デザインテンプレート デザインはテンプレートからの選択
CIや企業ブランドの概念は無い 一切言及無し
イメージ画像は所有のフリー素材 自社所有のフリーイメージ素材のみ
加工提案無し・サイズは規格サイズ プレーンな規格サイズが前提、加工は要求しなければ提案無し
用紙の提案は標準流通紙のみ 用紙はなるべく一般で良く使用される印刷流通紙、ファンシー系や特殊紙は手間が多く、リスクもあるため使いたがらない
校正回数は1〜2回のみ 制作期間短縮のため、校正回数は多くて2回で校了、客にも校正責任を負わせることもあり
ただし校正回数が多いことが良いわけではなく、回数にキャップをかけてしまうことが問題
本紙・本機色校正は原則無し 基本はデジタルコンセンサス(簡易色校正)、本紙色校正は面倒で別途費用のため避ける傾向
印刷はネット印刷が基本 ネット印刷を前提とする業者の場合、版ズレ・色転び発生リスク(ネット印刷は複数印刷物を付け合わせで、大きな印刷機で面付けし刷版するため、個別調整は不可)
ただしインフォームドコンセントで事前にリスク説明があるのは良心的
レスポンスの悪さ とにかく弊社への相談で、既存業者のレスポンスが悪い、返事が遅い、というクレームで業者乗り換え、という事態は枚挙にいとまがない

まさにこれらはアルアルなのです。ご経験の方もいると思います。
その他挙げればまだたくさんありますが、
誤解を恐れずに言えば、これらは特に低価格、格安業者の傾向と言えるでしょう。
残念ながらこれらで工数をカットすることでしか採算はとれませんし、
そもそも業者によっては、対応能力のあるマンパワー、クリエイターがいないことからも、
こうせざるを得ないケースもあると思います。
自ずとクオリティや効果を求める以前の問題となります。

17. RFPを準備しよう!

業者プレゼンの機会に合わせて、
PTでオリエン目的の「RFP(Request for Proposal)=提案依頼書」を準備しましょう。
ここまでで詰めてきた自社の会社案内づくりの基本要件をとりまとめ、
提案依頼書として示すものです。
このRFPの主な目的は、業者の提案策定と見積書作成のためのもので、
形式は特に決まったものがあるわけではありませんが、
あまり厳密に、ガチガチのスペックにならないよう、気をつけたいものです。
それは会社案内制作業者の裁量やフリーハンドの側面をしっかり残しておくことで、
PTでは想定できなかった、優れた提案を期待できる余地は大変価値あることです。
そこを踏まえ、概ね次の要件をメンバーで取りまとめましょう。

RFP

またこのRFPは、遅くとも次項の業者プレゼンの前には事前配布しておきましょう。
業者へ企画意図を明確に伝えられ、業者のプレゼン内容に反映され、
提案精度を高める効果
が得られます。

18. いざ!業者プレゼン開始

最終的にプレゼン参加する業者選定が完了したら、
業者プレゼンを設定し、開催します。
この機会は前述の通り、複数社からの絞り込みを経て、3社程度で行うことが適正でしょう。
多忙の中、兼務で会社案内づくりPTを担う面々だけに、
特にキーパーソンのリーダーは、良識ある判断をしたいもの。
時々上席から10社程度でやれっ!
と指示があって血眼になって業者プレゼン対応をしている企業に行き当たりますが、
ここでその企業の上席に、部下を、PTを酷使するのではないっ!
と助言をしておきたいと思います。

そういう場合、得てしてPTの意思より、上席の意思が優先され、
結局上席が主観や好みで決めてしまうことが……イヤハヤ……
何のためにPTが頑張ってきたのか。

少なくともこのような事態にはならないことを祈念します。

ただPTの業者選定〜決定するプロセスは、
このブログの内容に沿って決めることがオススメです。

19. まとめ

ここまで読まれた場合、かなりテンコ盛りでご苦労様でした!
筆者もここまでの記事執筆になると考えていませんでした。
ただ会社案内づくりのナレッジをありっ丈、絞り出したつもりです。

偏に会社案内づくりを真摯に考えている企業、PTメンバー方々に対し、
想定する品質を備え、
企業の公式メディアとしての品格を持ち、
希望通りの期待効果を発揮し、
しかも社内から高い評価を受ける。
これらを実現できることを狙いに書き下ろしました。

ぜひご高覧いただき、
かような会社案内づくりに活かしていただければ幸いです。

(執筆・編集|メイソン)