営業・マーケティング-10

カタログ作成の手順と進め方|発注前のチェックリスト付き

一言にカタログといっても、
営業活動、展示会、企業オーダー用、DM向き、
デジタルカタログ、Webダウンロード…
今やその使い方はオフライン使用に加え、
オンラインのハイブリッド活用で、
多様な進化を遂げています。

そんなカタログは業者へ発注する前の事前準備が大切!
作成の手順と進め方をわかりやすく解説しました。

これをすぐに活かせる【事前チェックリスト】にもまとめましたので、
担当者の方々、大いにご活用あれ!

1. カタログ作成はチーム編成が最初の仕事

製品カタログ、商品カタログ、サービスカタログ、
総合カタログ、カテゴリーカタログなど数々あり、しかも業種・業態によって100種100様、千差万別。
また8ページや20ページ程度のカタログから、100ページ、300ページのカタログまで。

リニューアルするにしても新規で作るにしても、
やはりなるべく複数のビジネスパーソンの眼や頭脳が関与すべき!と考えます。

カタログはほぼ営業部門がその必要性の最たる部門でしょう。
ぜひ部門内の複数名でチームを編成して取り組んでください。
もし他の部門の関与が及ぶ場合は、積極的に取り入れ、プロジェクトチーム(PT)として臨んでください。

その場合、キーパーソンとなるような、権限や発言力のある人材が加わると強い味方になります。

プロジェクトチームのイメージ

2. 営業部員の要求や課題をとりまとめる

作成するカタログを活用するのは、そのほとんどが営業部員と考えられるため、
PTでカタログを使用する営業部員の要求や課題を取りまとめましょう。

その要求・課題を列記すると…

  • 掲載製品の改廃があり、早期に改編が必要
  • デザインが古くインパクトが無いので刷新したい
  • 営業社員が使いづらいといって使用されず在庫の山
  • 年度版で更新してきたが、新製品や追加品が増えパッチワークになっている
  • 品種が多いためカテゴライズに苦慮している
  • 複雑に入り組んだ商品群を整理できていない
  • 競合他社のカタログがデザイン・構成で大幅に改善、大きく差をつけられた
  • 市場のニーズ変化で既成の構成に無理があるが、どのように再編していいのか?
  • 200ページに増え毎年更新するのはコスト増になるため何かいい方法はないか?

カタログを使う営業部員のお悩みの一部だと思います。
特にカタログをリニューアルする場合、この場面でしっかり要求や課題をホンネで明確に顕在化させましょう。

3. カタログの目的や用途を明確にする

次に営業効果を最大化するための事前準備として、
カタログを使用する目的や実際に使用するシーンを踏まえ、
明確に定義することが重要です。

そこでカタログの目的や使用するシーンをここで一旦顕在化させましょう。

目 的
用 途
具体的方法
営業活動 多目的な営業活動 対面の新規顧客開拓、展示会・イベント配布、店頭配布
顧客オーダー 発注促進・販売促進 顧客側に常備するカタログで、顧客任意のオーダーに使用
デジタルカタログ オーダー向け電子カタログ ページめくりUIで展開する電子カタログをWebカタログとして運用
Webダウンロード 資料請求やフリーダウンロード用 コーポレートサイト、専門サイトや戦略ブログ等に装備
DM 新規市場開拓・オフラインDM 封入用カタログで郵送・宅送

4. 前任者・他部門に聞く

カタログ作成の前任担当者に作成した当時のエピソードを聞いたり、アドバイスを受けてみましょう。
カタログリニューアルになる場合、その助言は作成に直結するため、大変有意義です。

また社内他部門でカタログを作成している場合、
その部門の担当者に聞き取りをしてみます。
部門こそ違え、同じアイデンティティを持つ旗の下の同志、
制作期間、コスト、業者選び、撮影、素材集め…等々、
かなり突っ込んだ話も聞けること請け合いです。

5. 他社カタログサンプルを収集

カタログサンプルは、昨今なかなか収集しづらくなってきました。
Webからの資料請求はPDFダウンロードが主流、
現物カタログ請求は同業者を排除するため、入力情報の審査後に送付するなど。

得意先や上顧客に頼んで他社カタログを入手するなど、なかなか一筋縄ではいきません。
それでも業界や業種が異なるカタログでも、意外と参考になるもの。
むしろ既成概念に囚われない、思わぬ発見やヒントを得ることができます。
後述する業者に提案させればよい!またはサンプルを持って来させる、
だけでは選んだ業者の資質によるところが大きく、限界があると思った方が賢明。
客観的な事前の情報収集を、可能な限り行いましょう。

PDFデータでもやむを得ないですが、可能な限り現物がベター。
用紙の風合い、表紙の加工具合(光沢・マット・箔押し等)、マチの背表紙具合、
インデックスや導線の使い勝手等、デジタルでは得ることができない手触り、風合い、
さらにページをめくる操作性は、
カタログ“現物”ならではの、様々な要素や気付きをサジェスト
してくれます。

カタログサンプル

6. チームで分担して素材集めや情報整理

これも業者が決定してからでいいのでは?と思いがちですが、
アイテム数が数百点、数千点…と多ければ多いほど、新製品、改廃、仕様変更、カテゴリー組み替え等、
先行して掲載情報の精査をすべきでしょう。
その上で不足する素材、仕様情報、写真等の入手や手配まで、
なるべく細めに情報整理をしておくと、制作委託業者の実作業に入った際も、
非常にスムーズに進行管理ができます。
その場合、チームで分担して進めることをオススメします。
その意味でもカタログ作成チームというのは大事なんですねェ。

筆者がよく経験するのが、業者決定したあとに、ようやく素材や情報収集に着手する…
その間、我々業者はかなりの時間“待ち”を余儀なくされることもしばしば。

いくらチームで役割分担と言っても、本業と兼務の場合が多く、無理からぬことかもしれませんが…

7. 想定する仕様や加工を決めておく

リニューアルでも新規作成でも、
カタログのおおよそのサイズ、ページ数、形状、加工等、カタログのハードウエアを決めておきましょう。
ただ専門性が高い要件が多いため、委託する制作会社と事前によく詰めておくことが重要です。

仕 様
要 点
サイズ A4・B5等の規格サイズ、正方形やスリムサイズの規格外サイズ
ページ数 この時点で50ページなのか、100ページなのか、200ページなのか、おおよそのページ数を決めておく
形 状 角R、円形、多角形、その他イレギュラーな形状
印 刷 ファッショナブル、アーティスティックなカタログの場合、多色印刷(4色+特色2色)、RGB印刷等、また環境対応型インキによるベジタブルインキ・ノンVODインキによる印刷等
綴じ・製本方法 リング綴じ、くるみ製本、中綴じ、無線綴じ、上製本、表紙カバー等
加 工 型押し、箔押し、型抜き、ポケット(タトウ)、グロス・マットPP加工、浮き出し、フロッキー加工等

8. 出来上がり納品時期を決める

カタログの場合、展示会や見本市など何らかのイベントに出展することに納期を合わせること。
また年度版で作成する場合、企業の新年度に合わせリフレッシュすること。
比較的これらが仕上がりタイミングを決定する動機として多い様ですが、
いずれにしても30数ページを1ヶ月でとか、
100ページを3ヶ月で作ってほしいとか。
残念ながら無理です、いやっ、最早無茶でしょう!
掲載アイテム数が多ければ尚更。
ぜひとも以下の適正納期を参照してください。
無理を通せば、必ず道理が引っ込み、その期間で上がったとしても、
その後に瑕疵が発見されたり、不良品の発生リスクが大きく高まることとなります。
それでもやる!となれば制作業者との間で瑕疵担保責任の所在を明確にしておくべきですが、
筆者所属会社では承ることができません。
ぜひ以下の制作期間ガイドラインをご参照ください。

ボリューム
制作期間
【企画・デザイン制作・DTP量産・印刷加工】
20〜50ページ
3ヶ月〜6ヶ月
100〜200ページ
8ヶ月〜10ヶ月
300ページ以上
10ヶ月以上

9. ブランドやCIもチェック

この企業ブランドやCI、意外と蔑ろにされていることに遭遇します。
大企業や上場企業の場合は社内統治レベルで末端まで行き届いていることがほとんですが、
中小企業の場合、複数のカタログがある場合、部門や担当者によって企業ロゴの取扱いが異なったり、
ブランドマニュアルに反する色使い、表現方法がなされたり。

もちろん中小企業でも厳格に企業アイデンティティを徹底させている場合もあります。さすがと言えるほど。

カタログと言えども、会社案内やコーポレートサイトを作るように、
やはり企業ブランド、CIをきちんと踏襲するレギュレーションを示してください。

カタログ作成の場合、営業部門主導で作成に当たることが多く、
広報や総務が関与しないことの落とし穴だったりします。ぜひお気をつけあれ。

10. デザインやクリエイティブの要件

前項ブランドやCIの流れに関連することですが、
カタログはブランドイメージやクリエイティブ性を抜きには語れません。
つまりデザインクオリティの良否は、プロダクトやサービスの価値を決定づけます。
メーカー直々のカタログであれば、自社製品のブランド力のバロメーター。
商社・販社でも、自社のサービス対応力の源泉となる商品カタログ。
その強みや他社差別性の証とするデザイン表現は、
特に新規取引を検討する見込み企業において、審査の重要なファクターです。
製品・商品、またサービスのブランドを表現するデザイン性、写真のクオリティにに至るまで、
事前にしっかりとその方針を持っておくべきでしょう。

11. 予算化で社内コンセンサス

さてこのカタログ作成にかかる費用ですが、
年度版で毎年カタログを作成している企業の場合、
またこれまで何度か作成してきた企業は、ある程度相場感のある予算計上がなされているでしょう。
ところが、初めてカタログを作成する企業、そのほとんどの担当者は相場感を持ちようはずがありません。
しかも100ページ、200ページカタログともなれば、一体いくらかかるのやら?

そんな担当者には、ぜひこちらの「カタログの制作費相場」を参照してください。

上席とのコンセンサスや社内決裁を得るためにも、大事なプロセスですので心して臨みましょう。
ただ低価格や最安値のカタログを目指すと、総じて良い結果は得られないでしょう、念のため。
ローコスト・低価格のカタログ、業者は自ずと品質や工数削減になります!これは世の常。
低コスト・高品質を要求されても、自身の業務に照らすと、そんな都合のいい客は!
と忌み嫌うでしょう。
やはり「カタログ品質=適正価格」、これがバランスのいい合目的なカタログを作成する秘訣です。

ここで弊社の適正価格によるカタログづくり、その精神を込めた逸品をご覧ください。
明らかに同業者のカタログづくりとの違いを読み取れるはずです。

12. RFPを準備する

このRFPはリクエスト・フォー・プロポーザル(request for proporsal)。
制作委託する業者に対し、発注者の構想や仕様・要望を伝えるものです。

とは言え、取りこぼしなく業者へ伝えるものでなくても、
その時点で考えられる要求は伝えたいもの。
いや、可能な限りわかるだけのメモ程度のものでもいいのです。

このRFP、必ずしもマストではありませんが、
ノープランで、業者の胸を借りたい。
というだけでは、あまりにも主体性がありませんね。
それはそれで、意気に感じる業者であればいいのですが、それを良いことに自社の事情や主観でやられた日には、
業者の思う壺、残念なカタログが出来上がる可能性大です。
なにぶんお気をつけあれ。

でもご安心ください、この記事をそのままRFPにできます。
またこの記事の項目から拾ってできる範囲で求めることもいいでしょう。
後述でチェックリストにまとめていますので、ぜひ利用してください。

13. カタログ作成業者を選定

カタログ作成業者を選ぶことは大変至難の業です。それは業者もピンキリで千差万別だから。
ここを読み間違い無きようにしたいものです。
でも心配ご無用!不安を一掃しましょう。

その時点でまだカタログを作成委託する業者が決定していない中で、

  • 前回委託した業者
  • 腕の程はわからないが、紹介してもらった業者
  • アワード受賞やプレス紹介している業者目
  • Web検索での業者物色

これらどれも業者選定方法として間違っておらず、むしろこの際全てで当たってみるのも良いかと。
ただし候補業者は多くてもMAX4〜5社の範囲とすべきでしょう。
時に、8社とか10社から聞いて選ぶのだと…
忙しいビジネスパーソンが、そこに時間を費やす蓋然性があるのか?
上席・上長であれば賢い選択手法を部下に命じてもらうのが賢明かと。

実際の決定審査には、業者の実績、対応力、標準的制作費を基準とすることが、
より客観的で、バランスの良い選定となるでしょう。
ただし、短納期・低価格業者には不満足・リスク要因が含まれることが多いため、
あとで後悔しないためにも事前確認を怠らず。

14. カタログ作成の【事前チェックリスト】

さァ、お待たせしました!
ここまで13項目にわたって、カタログ作成の手順・進め方について、プロの目線で解説してきました。
このチェックリストを参考にしながらも、
この順番や採用する項目は、企業それぞれの事情や、担当皆さんの必要性に応じてピックアップするも良し、
全てをこのまま活かすも良し、順番を入れ替えてやることも充分ありでしょう。

また企業によっては、別途に独自の要件を加えることもあるかもしれません。

しかしながら、カタログ作成にあたって、事前に少しでも心の準備になれば、
或いは漏れを無くし、あとで「しまったァーー!」とならないためにも、
このチェックリストを参照してもらい、良いカタログ作成の一助になれば幸いです。

カタログ作成の【事前チェックリスト】

項 目
要 点
☑︎
1 カタログ作成チームの編成 部門内の複数名でプロジェクトチーム(PT)を編成して取り組む
メンバーに権限や発言力のあるキーパーソンが入ると好都合
☑️
2 営業部員の要求や課題のとりまとめ カタログを活用する営業部員の課題・お悩みをホンネで顕在化し、とりまとめる
☑️
3 カタログの目的・用途を明確化 カタログを活用する目的や使用する方法を事前に明確化しておく
営業活動・顧客オーダー・デジタルカタログ・Webダウンロード・DM等
☑️
4 前任者・他部門に聞く 既存カタログの前任担当者、社内他部門でカタログを作成している部署の担当者のアドバイスを求める
☑️
5 他社カタログサンプルの収集 同業者カタログサンプルをはじめ、他業種カタログの現物を取り寄せて参考にする
☑️
6 素材集め・情報整理 制作着手する以前から、チームメンバーで分担してこれから作成するカタログ用の素材、仕様、写真等を入手し、情報を一覧に区分・整理する
☑️
7 想定する仕様や加工を決めておく この時点でのカタログのおおよそのサイズ、ページ数、形状、加工等のハードウエアを決めておく
☑️
8 出来上がり納品時期を決定 展示会・イベントのタイミング、年度版カタログは使用開始タイミング等、納品時期を起点にカタログ制作期間を逆算して決定
☑️
9 ブランド・CIのチェック 企業ブランドやCIを遵守するカタログ作成のため、社内のブランドマニュアル、CIマニュアルを準備
☑️
10 デザインやクリエイティブの要件定義 プロダクトやサービスのブランド価値を決定づけるデザインクオリティのイメージを持つ
☑️
11 制作費の予算化 社内決裁、社内コンセンサスにて事前に予算化することが望ましい
☑️
12 RFPの準備 次項カタログ作成業者選定の際に、自社のカタログ作成要件をプロポーザルとしてとりまとめる
☑️
13 カタログ作成業者を選定 実績、対応力、標準的制作費を基準に選定
短納期・低価格業者には不満足・リスク要因が含まれることが多いため事前確認

15. あと書き

カタログを作成する、といっても意外に大変なことが分かったと思います。
一度でも担当になって経験していればまだしも、
初めて担当になる、または社内で初めて作る、となれば、
想定すらできなかった、といっても無理からぬことでしょう。

業者呼んで、全て丸投げすれば、なんとかなるだろう…
と思いきや、あに図らんや、とんでもない!

しかも営業パーソンから不平が出て、顧客からは不満足やクレームもある。
となると、そこから原因箇所の特定、改善策の立案、
その結果によっては、ガラポンや再構築となれば、そりゃ〜もう大騒ぎ。

企業によっては、そのカタログが収益の大半を担っているとか、
そこまでなくても、営業部門の重要な営業ツールとして、欠くことができない。
その強弱はあるものの、概ねカタログの存在はそんなものです。

それだけにカタログはリニューアルでも、新規作成でも、
実はチェック箇所の多さは細部にわたって存在します。

当記事では、ここまでやるか?と言いたくなるほど、
重要な要件を挙げ、カタログづくりのプロとして紹介しています。
これは発注者として心得ておくこと。
逆にそれは業者の言いなりにならない、業者のやりやすい方法にさせない、
といった抑止力を持ちます。

企業の収益を担うカタログ、営業パーソンは手抜かりは許されないでしょう。

筆者の所属会社もカタログづくりのお手伝いをしています。
新規作成、リニューアルの際には、一言お声掛けいただければ、
間違いなくお役に立てると自負しています。

執筆・編集|メーソン