営業・マーケティング-16

印刷物のDXペーパーレスで市場はどうなる?会社案内パンフレットの行方

印刷業界が振るわなくなって久しい。
そこに流行病はやりやまいで一気に普及したDX現象が、無慈悲にも追い討ちをかける。
業界はこのまま滅びゆくのか?

ただ視点を少しだけ掘り下げてみると、
実態の本質が炙り出されてきた。

当記事はこれらファクトを世のビジネスパーソンへ知らしめたい、という想いと、
実は我が業界・同業社にもしっかり伝えたいという想いから執筆。
どうぞご一読あれ。

1. なぜビジネスパーソンか?なぜ同業社か?

冒頭のリード文でも記載した通り、この記事のメッセージを社会で活躍するビジネスパーソンに伝えたい。
それと筆者の業界、つまり同業社も意識改革にきっと役に立つからです。

まずビジネスパーソン。
社会やビジネスシーンではDX、ペーパーレス、デジタルやと、ラウドネスに発せられる中、
我々日本人はムードとして皆が同一歩調を強いられる「同調圧力」を受けやすい人種。
その結果、世のDXウェーブに過剰反応するがあまり、
デジタルこそ!ペーパーレスこそニューノーマルだっ!てな。
イヤイヤ、然に非さにあらず!ぜひこの記事を一読して同調圧力の洗脳から解放されてください。

また同業社においては、
印刷業界が廃れていく。。。自身の業界も衰退の一途、行く末はどうなることやら。。。トホホ。。。
こんな日々悶々もんもんとしている状態から一刻も早く解き放たれたい、何とか業界を盛り上げて行けないものか?
少々偉そうですが、そこに一石を投じます。

2. 印刷業界の市場動向を見てみる

01. クリエイティブ会社と印刷業界

記事テーマの印刷業界といっても、く言う弊社は印刷業ではありません。
顧客のオーダーにより、アウトプットを印刷物としてプロデュースする、言わばクリエイティブプロダクション。
会社案内やパンフレットの企画・構成からデザイン、コピー、撮影などのクリエイティブ制作を経て、
締めにアウトソーシングの印刷会社で印刷・製本して顧客に納品!

従って、弊社自体が印刷業ではないものの、必ず印刷物にしてナンボというビジネス。
つまり印刷業界と我がクリエイティブ業界は不可分の関係であり、
印刷業界の市場動向は、まさに我が業界の栄枯盛衰の現れでもあるのです。

02. 市場規模は縮少に歯止めがかからず

まずは、印刷業界の栄枯盛衰を長期的に表す下のグラフをご覧ください。

【印刷産業全体の業容・動向】
グラフ-01
グラフ-01|一般社団法人日本印刷産業連合会にて、経済産業省「工業統計調査」及び総務省・経済産業省「経済センサス 活動調査」による調査データを基に作成された印刷産業全体の業容・動向の公表データ。
1981年以降5年ごとのデータをピックアップ。2020年のみ最新データとして掲出。

イヤハヤ。。。印刷業界は何とも嘆かわしいお姿をさらけ出しておられること、まことに残念。。。
おふざけで言っているのではありません。
特に近年流行病を境に、社会はDX導入が進み、
ペーパーレス化をはじめ、印刷物としてアウトプットすることなく、コンテンツのデジタル化が一足飛びに進みました。

グラフの統計は2020年までですので、流行病のピークには入っていますが、
その年以降は怖くて見ることができません。。。
しかしながら以降も下落が継続することとなりそうですが、しかしてその実態は?

3. 細分化すると実態の本質がフェードインしてきた

01. 印刷業界と共に衰退の一途なのか?

当然、我がクリエイティブ業界も打撃を受け、存亡の危機に直面している。
すわっ!これは一大事。
確かにここ数年、何となく右肩下がりの実感はあるものの、本当にそうなのか?
これから未来に向けてもさらに凋落の一途を辿るのか?

居ても立ってもいられず、少し踏み込んで分析しようと。
実態を表す統計データを見つけたのです。

02. 何となくわかっていたもののその原因の一端が。。。

経済産業省の「生産動態統計年報」という統計を引用し、印刷業界を4分野に細分化、
折れ線グラフにアレンジしてみました。(一部「山田コンサルティンググループ」の作表を参照)

尚、同じ経産省の統計でも部局、調査方法、出所が異なるため、
前出の統計データとの比較で、母数となる市場規模の捉え方が異なることを予めご了承ください。
傾向として、類推する見方をとっていくこととします。

【用途別生産金額シェア】
グラフ-02
グラフ-02|出典:経済産業省「生産動態統計年報」

オッと、この折れ線グラフの中に、一際大きく右肩ダウンしている折れ線が見て取れます。
そう、「出版印刷」の分野、つまり雑誌・書籍の出版業界と新聞業界
これは際立って落ち込みが大きい。
確かに昨今の出版不況、雑誌の廃刊、毎年激減する新聞発行部数。
それにしても一人負けの様相。。。

4. 一方で別の事実が浮き彫りになってきた

01. どっこい!商業印刷は底堅い

さらにこのグラフ-02から、商業印刷、事務用印刷、包装印刷の3分野はほぼ横這い。。。
これら3分野は、出版印刷とはちょっと事情が異なるようだ。
その見解を述べる前に、出版印刷以外の3分野それぞれの印刷物品種をご紹介しておきます。

印刷分類
印刷物品種
出版印刷 書籍、雑誌、新聞、機関紙、業界誌
商業刷物 パンフレット、ポスター、カタログ、会社案内、社内報、リーフレット、POP等
事務用印刷 伝票、納品書、請求書、領収書、名刺、封筒、ノート、手帳等
包装印刷 パッケージ、包材、段ボール、化粧品ボトル、ペットボトル等

この中で弊社の属する「商業印刷」に目を移してみましょう。同じくグラフ-02です。

すると「商業印刷」分野、
下落、上昇を辿りながらも2016年以降、僅かな下落、その後ほぼ横這い。
ペーパーレス、デジタル化の社会環境下と言えども、
全体を通して底堅く、まあまあ善戦している方ではないでしょうか?

事務用印刷、包装印刷においても、市場規模はそこそこですが、
いずれもこの時点では堅調に推移していると見ていいでしょう。

02. 印刷業界右肩下りの原因が明らかになった

つまりグラフ-02からも、そもそも出版印刷は2010年以前の市場規模が大きかっただけに、
凋落による業界全体に与える影響はすこぶる大きいことがわかります。

さらにグラフ-01から、2000年直前辺りをピークに、恒常的下落をし続ける業界衰退の大きな原因は、
実は出版印刷にあった
ことが明らかになったと言えそうです。

しかしながらこのグラフ-02、データの抽出が2018年まで。
流行病2020年以降の実態がわからぬではないか!
このレベルでは流行本番のダメージやアフター市場の現状はベールに包まれたまま。
そう、全くその通り!
ここで中途半端に終わっては、牽強付会けんきょうふかいという疑義が残るだけ。
ということでその年以降のデータ入手に奔走したのですが、
残念ながら経産省や総務省等の官公庁サイト、民間統計会社など色々当たるも、
それ以降のデータ入手が叶わず、残念。。。

ただこのまま引き下がってしまっては名がすたる。
数値ベースや出所こそは異なりますが、非常に参考になる統計データを発見!

5. 商業印刷の関連市場はしぶとく推移

01. 確かに大きなダメージを喰らうも

その統計データをご覧に入れましょう。
我田引水、ご覧に入れるのは弊社の属する「商業印刷」業界のみとさせてください。
スイマセン!

そのデータソースになるのが、電通の「2022年 日本の広告費」を参照して作成された、
「株式会社ショーワ」という印刷機材専門商社で提供されている記事、
【「2022年 日本の広告費」分析:3)商業印刷市場など】から抜粋・引用しました。

前述の通り、参照した統計データの出所が異なるため、
当然、統計の市場範囲や要件の違いにより数値・データは異なりますが、
こと「商業印刷」という分野の統計から、市場推移の傾向として十分類推できるものとして、ここで参照してみました。

この商業印刷市場の2019年〜2022年まで、
つまりまさに流行突入からピークを経て、平常化に向かう直前までの時期。
早速以下のグラフをご覧ください。

グラフ-03
グラフ-03|データソースやデータ抽出範囲の違いはあるが、同じ商業印刷を対象とした統計のため、若干の違いこそあれ、概ね傾向値として十分参照に値するもの。

2019年から2020年は、さすがに市場は10%以上もの大きな下落を伴いました。
やはり大きなダメージを喰らったのです。
事実、弊社も紙媒体需要の減少という痛手を負うこととなりました。

でもいかがでしょう?2020年以降はほぼ横這いで推移。
完全に元に戻ることはなかったものの、そのままズルズルとチカラ尽きていくことなく、
脈々とその需要は息付いているのだなァ、と実感するのです。
弊社でもそのグラフ通りの感触を持っています。

この際、この商業印刷業界推移のグラフ-03を、2019年以降の市場動向と看做せば、
グラフ-02とうまくマージさせることによって、2022年までを一通で観測することが可能となりそうです。
では早速次項でグラフを作図してみました。飽くまでも実統計データに基づく類推にて。

02. 流行病からそれ以降の実態が明らかに

ではお待たせしました。
グラフ-02に上のグラフ-03、2019年以降をマージさせ、2022年までの商業印刷市場を、
グラフ化(グラフ-04)してみました。

2019年以降の『商業印刷』市場規模【推定】
グラフ-04
グラフ-04|出典:経済産業省「生産動態統計年報」2018年までの統計データと、2019年以降は電通「2022年 日本の広告費」を合成して作成。

とは言え、お手盛りや主観は極力押さえ込んだこの傾向は、あながち実態と掛け離れた結果ではないと思います。
グラフ全体を通して考察を加えると、
2015年のピークを境に逓減していた市場は、データをマージした2020年に流行病でガクンと。
東日本大震災の影響を受けた2011年とほぼ同レベルに冷え込みましたが、
その後は何とか辛うじて維持、まさにズルズルと落ち込みの一途とはなっていないのです。

これらを踏まえ、ここで勝手な解釈と見解になりますが、
前述の大震災後の2012年以降、V字回復に転じ、その後2015年まで立派に成長を成し遂げている。
その時のエネルギーを業界挙げて再起動させれば、2024年以降はリベンジできるのではないか?
イヤッ、必ずできる筈です!

事実それを裏付ける追い風ネタもあります。前出「一般社団法人日本印刷産業連合会」の月次動向によると、
2023年度商業印刷領域は10月迄で前年同月比3.1%増と速報リポートされています。
まさに商業印刷業界にとって朗報でしょう!
今後もこの速報統計は定点観測していきたいと思います。

一方、出版印刷は残念ながら8.1%減。。。時代の流れは止められないようです。

03. 『エッセンシャルツール』として2020年以降も必須

でもこのグラフが示す通り、あの悪夢の状況下、世のビジネスパーソンは、
日常業務でベーシックに商業印刷の印刷物を使ってくれていたのでしょう、ウレシイ!
会社案内、採用パンフレット、製品カタログ、学校案内、病院リーフレット。。。

ビジネスパーソンにとって、これらはまさにビジネスの『エッセンシャルツール』と位置付けられており、
営業活動、BtoB取引、採用活動、広報戦略、マーケティング戦略など、
多目的なビジネス活動推進において、最早不可欠の存在と言えたのでしょう。

これは業界人として、大変嬉しいことであり、
心から皆さんに感謝申し上げる次第です!

6. 今後はアナログとデジタルのハイブリッド

然は然さはさりながら、筆者はビジネスパーソンに、アナログの商業印刷物一辺倒で、
さらなる需要拡大を願っているのではありません。

無論、利用増大が図られることはやぶさかでは無いし、
むしろ大いにビジネス活用を促進していただきたい。

ただ我々日本人、過去遅々として進まなかったビジネスのDX化が、あの短期間で一気に進み、
業務効率や省力化、ペーパーレス、コスト削減など大きなイノベーションを手に入れました。

これはこれでビジネス社会の風土にガッツリ定着したわけで、
むしろ積極的に摂り込んでいくべきでしょう。

つまり会社案内やパンフレットの印刷物とデジタルコンテンツをハブリッドで使い分けること。
まさに次世代の賢いビジネスパーソンの選択と言えるのです!

この辺のことは「競争力を高める印刷物とデジタル活用法《ビジネスマンの賢い選択》」でも言及していますので、
ぜひそちらもぜひご覧になってみてください。下のバナーから↓↓↓


あと書き

印刷業界の凋落といって、実はこれを十把一絡じゅっぱひとからげで語っても、あまり意味がない、
というよりむしろ、罪の方が大きいことがわかったと思います。

印刷やクリエイティブ業界の経営層であれば、それによって経営戦略を見誤り、
実態と異なる事業路線をとってしまうことで経営リスクを被ってしまう。。。決して大袈裟なことではないのです。

一方海外シンクタンクの調査によると、
世界の商業印刷市場は、年率2%で成長が見込まれると分析されています。
ただ今後国内でそのまま同様の成長が見込まれるのか?
と言えばにわかにYESとは言い難いですが、個人的には期待を持ちたいものです。

筆者は別にここで経営論を語るつもりはありませんが、
弊社の属する商業印刷業界が今後もマーケットを維持できるのか?
その業界で事業を営む弊社が成長戦略を語れるのか?
非常にクリティカルなテーマなので、敢えて当記事の執筆に至った経緯があります。

特に同業者の商業印刷関連のクリエイティブ会社の方々は、
一読の価値があったのではないかと自負するところです。

尚、前項の通り、印刷物とデジタルコンテンツをいみじくも駆使する、
競争力を高める印刷物とデジタル活用法《ビジネスマンの賢い選択》」は、この記事の続編となります。
合わせてぜひご覧くださいませ!

(執筆・編集|メーソン)

  


『印刷物とデジタル』をハイブリッドで提供。効果的な活用方法も含めご提案!